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darkness
¥2,160(税込)
Jigen-009
darkness
¥2,160(税込)
Jigen-009
英音楽誌「WIRE」でも紹介された.esの秘蔵音源、完全版で遂にリリース!
初回のみ完全ハンドメイド、アーティスト稲垣元則のスペシャルアートワーク仕様。
1.darkness 26:30
Live at Gallery Nomart, Osaka, November 3rd, 2012
Front Card, CD Label
Photo by Motonori Inagaki 稲垣元則
Produced by Satoshi Hayashi 林 聡
Publisher: Nomart Editions / jigen-production
Catalog no.: NOMART-103 / JIGEN-009
Live at Gallery Nomart, Osaka, November 3rd, 2012
Photo: 稲垣元則 Motonori Inagaki
roducer: 林聡 Satoshi Hayashi
橋本孝之 Takayuki Hashimoto(sax,g,harmonica改造尺八他)
sara(p,perc.dance他)
009年、大阪の現代美術画廊「Gallery Nomart(ギャラリーノマル)」をホームに結成。橋本孝之(alto sax, guitar)+ sara(piano, others)の二人によるコンテンポラリー・ミュージック・ユニット。 現代美術ディレクター林聡がプロデュース。
結成当初より美術作家、前衛音楽家、ダンサー、映像作家、デザイナー、詩人等、他ジャンルとのコラボレーションを展開。東京と大阪を中心に演奏を行っている。音楽領域においては、即興、ノイズ、電子音楽、ジャズ、ロック、クラシックなど国内外のミュージシャン達とのコラボレーションによって生まれるボーダレスな世界ー “音”と“音楽”の間(ま)で交錯する感覚を表現する。
2010 2009年10月結成、12月初ライブ。2010年よりライブ活動開始
2011 美術作家 中原浩大とのコラボレーションアルバム「オトデイロヲツクル」をリリース 「今村源展 VOID – 通路あるいは音として-」インスタレーション空間にて公演「させぼアートプロジェクト」招聘アーティストとして美術作家 稲垣元則と共に「Night of Railway」公演
2012 美術作家 藤本由紀夫とのコラボレーションアルバム「Resonance」リリース
2013 3rdアルバム 「void」をPSF Recordsよりリリース 英音楽誌WIREにてレビュー紹介/アルバム「darkness」より音源提供
美術作家 稲垣元則、名和晃平とのイベントを収録したDVD「Three Phase:Kohei Nawa+.es+Motonori Inagaki」リリース
静岡市美術館にて美術作家 今村源とのコラボレーション公演
2014 ノイズミュージシャン美川俊治 T.Mikawaとの共演アルバム 「September 2012」を香港のレーベルRe-recordsよりリリース
橋本孝之のサックスソロアルバム「COLOURFUL – ALTO SAXOPHONE IMPROVISATION」リリース
橋本孝之のギターソロアルバム「Sound Drops」リリース
2015saraのリーダーアルバム「Tinctura」リリース(共演:佐谷記世、河端一、Yung Tsubotaj、橋本孝之)
2015春の3Live(酒游舘、ギャラリーノマル、七針)を収録したライブ盤「SENSES COMPLEX」リリース
「もう歌は歌わへんの?」と橋本孝之に訊いた事がある。
.es(ドットエス)がギャラリーノマルを活動拠点に置き、造形やビデオアートを含めたトータルアートをコンセプトとしながら展開してきたとしても、それは橋本の持つ情念的なもの、表現の原初的な内面的なものにとっては偶然、用意された環境であったに過ぎないのかもしれない。橋本のサックスは激烈であり、初期衝動とも言えるような情念が込められている。阿部薫に近似性があるのはスタイルではなくその出音のスピードやアタックの強さから湧くイメージに相違ないが、時に彼は実はサックスプレイヤーですらないと感じるのは、その非―ジャズ的コンテキストの成せる業というよりは、そのエネルギーのぶつけ方のパンク的な事に因るだろうか。ライブにおいて橋本は楽器を次々に持ち替えてゆく。サックス、ハーモニカ、ギター、最近では改造された尺八といったインストゥルメンタルをまるで自分の内面発露を通過させる小道具のように扱っていく。演奏中、それぞれをやり切ったかの到達感、あるいはやり切れないもどかしさを裡に含みながら、手元にある道具をそれこそ順番に対決する競技種目のように持ちかえながら全身全霊で演奏してゆく。そしてその初期のライブにおいて彼は確かに歌も歌っていた。その内容はもう忘れたが、やはり何かしら内部の吐露を感じさせる啓示的、告発調の詩であったと記憶する。私にとってはその歌こそが決定的に橋本孝之の個性を際立たせ、他の何物にも依存しない屹立性を象徴するものだった事を今、感じている。
自らをコンテンポラリーミュージックグループと名乗る.esは橋本孝之(サックス etc)とsara(ピアノ、パーカッション)によるユニットで2009年の結成以来、セルフレーベルでの音源、映像作品を制作し、前作「void」はP.S.Fレコードからリリースされ、「WIRE」誌でも紹介されている。私は3年前、ライブ会場の楽屋で対バンである彼らに初めて会った。二人は確か「フラメンコ教室で出会った」と言っていた。服装もばっちりキメたこの長身の美男美女が、これからどんな演奏をするのかあまり気にもしていなかったのだが、いざ始まったその演奏は全く予想に反したもので、耳をつんざくばかりのアルトサックスの号砲、地を揺らすかのような低音で乱打されるピアノがまるで這い上がってくるように響く。エレキギターに持ち替えた橋本がアンプでフィードバックノイズを放つ。こんな音楽だったのか。その時、感じた意外性を今でもはっきり覚えている。その意外性とは.esのルックスと音楽性の乖離という私の先入観に因るものだったかもしれないが、フリージャズや即興音楽のライブコンサートで、しばしば見られるそのあまりにも服装やヴィジュアル的なものを顧みないプレイヤー達と正反対の雰囲気を持ったユニットはその意味でも斬新であったと思っている。そしてその意外性に答えを得られたのが、後日、2010年3月に彼らの拠点であるギャラリーノマルで開催された「銀河鉄道の夜」をイメージした様々なヴィジュアル作家によるビデオアートとの合体によるステージを観た時だ。その時、イニシアチブを握っていたのは.esの三番目のメンバーでもあり、プロデューサーである林聡であった。ギャラリーノマル の代表である林は.esの表現世界の総合監督の位置にあり、その日、客席で私の隣りに居た彼が、ギャラリーの空間全体を使って、雪を降らせる場面などで、その速度や色、場面転換などを細かくスタッフにリアルタイムで指示していた事を覚えている。そして演奏後の二人に対しても、細かい注文や批評を与えていた。つまり.esはビジュアルなコンセプトと一体型のユニットという本質を持ち、それは不可分な要素として機能していたのだ。最初に書いた橋本孝之の情念的なものの発露がアートと重ね合うように発信される時、これまでとは違う即興演奏の形態を感じさせるサムシングが生まれる。それがこの時、発見された.esの個性であったと思う。
思えば以前、MOMA(ニューヨーク近代美術館)に行った際、アート作品と同列に小さなスピーカが配置され、事もあろうにイクエ・モリやジョンゾーン等のダウンタウンシーンの前衛音楽が鳴らされていた。MOMAという幾分にもエスタブリッシュな場においてもこのような音楽が認知されているのだなと認識したと同時に、そもそも現代音楽はアートと連動した運動体として発展してきた事も再認識した。「昨日まで絵を描いていた奴が今日は楽器持って演奏していた」という70年代後半のニューヨークシーンの渦中にいたレック(フリクション)が目撃した回想もそんな時代の一コマを表しているだろうし、遡ればフルクサス、あるいは1950年代に日本で滝口修造がリードした実験工房も音楽家を含めた雑多なアーティストの集合体であり、彼らはダダやシュルレアリスムよろしく、しばしば共同のイベント形式を表現の場とした。
そんなある意味、伝統的な現代音楽の系譜に.esも通じるものがあり、これからの音楽シーン(袋小路のような即興シーンも含め)に新たな局面を作ってゆく起爆剤のような存在になり得る可能性を見る。その為にも再び、橋本孝之の歌が復活される事も個人的には願っている。そこに新たな様相が見られるのは必至だろう。
ギャラリーノマルを拠点にしながら、そこから飛び出して活発な演奏活動を展開する.esは今では数多の国内外の有名アーティストと共演する存在になり、EP-4のメンバーを加えたThe Zzzippsの結成にも至っている。
そんな.esのアルバム「darkness」を縁あって私が主宰する時弦プロダクション</a>からリリースする運びになった。プロデュースは林聡、nomart editionsであり、時弦プロダクションは配給レーベルという形で参画させていただいた。発売は9月7日。すでに各メディアでの批評も見られ、大変、注目されている。
宮本 隆 時弦プロダクション
2013.9.2