「フリーダ・カーロの遺品 -石内都、織るように」<br />オリジナルサウンドトラックSHIN’ICHI  ISOHATA ‘The Legacy of Frida Kahlo’

磯端伸一 shinichi  isohata

「フリーダ・カーロの遺品 -石内都、織るように」
オリジナルサウンドトラックSHIN’ICHI ISOHATA ‘The Legacy of Frida Kahlo’

¥2,160

jigen-013

2015.8.8 in store

磯端伸一 「フリーダ・カーロの遺品-石内都、織るように」サウンドトラック “The legacy of Frida Kahlo” SHIN’ICHI ISOHATA

1.lotus (guitar solo version)  蓮 2:01
2. butterfly scales (guitar & piano)  鱗粉 1:25
3. angel vibration  天使の鐘 3:22
4. lighthouse  灯台 2:27
5. red thumbtack  赤い鋲 1:43
6. sloping road with sea view  海と坂道 3:27
7. silver white forest 純白の森 from ”scene” 「情景」より 2:12
8. sailer  帆掛け船 0:47
9. Japanese lantern 灯火(ともしび) 0:57
10. raindrops 雨滴 0:50
11. calm in seaside 海辺の凪 1:12
12. ephemera 蜉蝣(かげろう) 1:28
13. diamond dust 細氷 1:30
14. skylark 雲雀 1:21
15. white magnolia 辛夷 three pieces for semi abstract 半抽象のための3つの小品 1:14
16. nCr 群 0:30
17. amalgam 融合 0:42
18. nPr 列 0:39
19. calm afternoon 優しい午後 3:33
20. zephyr 微風 0:55
21. mischief waltz 悪戯円舞曲 3:24
22. seasons 四季 4:12
23. aquamarine 藍玉 2:05
24. butterfly scales (guitar) 鱗粉 1:12
25. lotus (movie version) 蓮 4:36
total 47:52

all tracks composition and improvisation by SHIN’ICHI ISOHATA
except track 3.7.23 by NAOYO YAKUSHI

SHIN’ICHI ISOHATA electric and acoustic guitar
guest NAOYO YAKUSHI piano

recorded by Owa Katsunori and Shin’ichi Isohata
at Studio You Osaka,Geijustu Souzoukan Osaka , Isohata‘s home 4/3/2014-6/1/2014
edited and mixed by Miyamoto Takashi and Shin’ichi Isohata
mastered by Owa Katsunori at Studio You 6/13/2014

cover design by Oguchi Shoheiand Atsushi Nishitarumi(Nondelaico)
special thanks to Kojima Takashi, Osawa Kazuo (Nondelaico)

produced by Miyamoto Takashi

小谷忠典監督「フリーダカーロの遺品ー石内 都 織るようにー」サウンドトラックに寄せて(ライナーノーツより)

映画「死刑台のエレベーター」(1958年、ルイ・マル監督)の音楽を担当したマイルス・デイビスは事前に映画に目を通し、あらかじめいくつかのメロディの断片を用意、本番でラッシュ・フィルムを観ながら即興で音楽を完成させていったと言う。サウンドトラックという本来、映画を際立たせるポジションにある音楽にミュージシャンが主体となった即興要素を導入し、結果的に映像の力をより高める事に成功した最初の例であろう。

磯端伸一の音楽が即興音楽にも関わらず、どこか情景的なイメージを喚起させ、コンパクトな物語性を感じさせるのも彼の演奏にメロディの僅かな断片があり、そこからインプロヴァイズに発展させてゆく型があるからである。あるいはそのメロディの断片そのものをその場で即興的に生み出している面もあるだろう。いずれにしても磯端の音楽の豊饒さの背景に彼の際立ったメロディセンスがある事はまちがいない。例えばハーモニクス奏法を駆使するインプロヴァイズギタリストは数多いるが、磯端ほどハーモニクスで充分なメロディを奏でる演奏者はいない。そういった感性は即興音楽家の中にあって異色な存在であると私は感じている。

前作「existence 磯端伸一 solo & duo with 大友良英」(jigen-008)に収録された18のソロテイクの全てに磯端はタイトルを付けている。即興演奏にタイトルをつけるのを彼は必然とした事が私には印象的であり、‘鏡の子供’、‘びいどろ’、‘月下美人’、‘影絵’などのタイトルが出来上がった音楽と共に、ひとつの映像的なシーンのように眼前に浮かび上がるような体験があった。そして私は「existence」が完成した時、この音楽が映画で使われたら最高だろうと感じていた。

ドキュメンタリー映画「フリーダカーロの遺品」は小谷忠典監督作品である。 小谷監督がたまたま馴染みの眼鏡店で今作のサウンドトラック向けの音楽家を探している事を話したところ、店主がラップトップ音楽家の小島剛氏に相談し、思案した小島氏が磯端伸一の事を伝え、小谷監督が「existence」を聴き、正式にオファーしたという。運命の不思議なリレーに導かれたかのように磯端伸一の映画音楽の制作は始まった。マイルス・デイビス同様、磯端はフィルムを見ながら音楽の構想を練り、いくつかのメロディの断片を作る。テイクによってピアノの必要を感じた磯端は、彼の音楽を最も理解しているピアニストである薬子尚代を呼び寄せ、録音に臨んだ。レコーディングスタジオには小谷監督も姿を見せ、音楽制作の行方を見守っていた。後日のマスタリングを経て提出された複数の音源がどの場面でどのように使われるかを知るよしもなかった私たちであったが、試写会にて確認したその素晴らしいマッチ感には驚かされた。各々の場面にまるで必然のように音楽が収まっていたのである。

「フリーダカーロの遺品」は故人の遺言に従って50年間、封印されていた数百点の遺品の撮影を依頼された写真家、石内都の仕事をメキシコにて追うドキュメンタリー作品である。映画はフリーダカーロの衣服や装飾品を次々に撮影する石内都をカメラが追いながら、図らずもメキシコの伝統文化へのアプローチ、そして石内都の個人的な物語を交えて正しく時空を飛び超えるようなスケールの大きさで展開される。その映像は絵画のように美しく、しかも躍動している。その中で磯端の音楽は映画を観る者に強い印象を与えるだろう。場面転換に絶妙に立ち上がり、映像を物語化させる。しかも音楽だけでも独立し、それ自体が映像を備えるようなサウンドトラックである。

再認識した磯端伸一の音楽世界の幅広さ。「フリーダカーロの遺品」の中で散りばめられた各々のテイクが異なる顔を持つその多様性に今更ながら驚きを感じる。ギターでそれなりのムードを醸し出すアンビエントな演奏者は多くいるが、磯端は様式に埋没する事なく、意思に従って異なる音楽を提示し、しかも一つ一つが力強い。映画での場面転換に有用に作用し、ハッとさせるような瞬間の演出に磯端の音楽の力がとても大きく作用している事を実感した。それを可能にしたのは彼の音楽的蓄積の賜物であろう。サウンドトラック「フリーダカーロの遺品」は正に磯端伸一の奏法の多様性と技術鍛錬の成果ともいうべき作品となった。

かつて‘映画音楽’というジャンルが存在した。 それは‘かつて’という枕詞を付けざるを得ないほど、音楽市場では現在、インパクトを失っているのではないか。映画の名作にはサントラの傑作が必ず付随していた時代。「フリーダカーロの遺品」はそんな時代を思い起こさせるほどの映像と音の一体感を実現した画期的な作品であると私は信じている。

2015.7.10 宮本 隆(時弦プロダクション)

59021117

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